暗幕のゲルニカ:ブックレビュー

 
 
おはようございます。4月に入って繁忙期から少し落ち着いてきた代わりに、大口のものもちょいちょい入ってきました。もうデザイナーとしてではなくアートディレクターの領域なんじゃないの?という給料と見合わn…いや、まだ給料は考えないんだ。
でもこんな面白い案件ができるのは本当に今の会社のおかげですし、私は幸いにも素敵な上司や先輩に恵まれています。こんなちんちくりんでも守ってくれるいい上司は他にいないでしょう。それに、まだまだ若手な私に大口を幾つも任せてくれるんですもの。絶対に他じゃあできないよ。上司の居ぬ間に噂話。コソコソ…。いつも小生意気ですいません。
 
 

久々に小説を読んだかな

 
 
さて、ブックレビューは久しぶりです。少しfacebookで言いましたが、ちゃんと書こうかなと思って。最近ビジネス書が多くて、紹介しても面白くない本ばっかりでしたが。面白い内容だったので、私なりにレビューを書いてみようかなと思います。
ちょっと緊張…。
 
 

暗幕のゲルニカという本

 
 
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タイトル通り、ピカソの代表作である「ゲルニカ」という作品を題材に描かれた小説です。
2つの時代背景を元に、ゲルニカがどれだけ素晴らしい作品であるか、そしてこの作品に関わった人間の波乱万丈を書いています。
 
1つめは1930年代。ゲルニカが誕生した時代です。
2つめは2000年代。現在のゲルニカという立ち位置です。
 
この2つの時代が交差して、ゲルニカが持つパワーが浮き彫りになっていく物語でした。ぶっちゃけると、登場人物の殆どが「ゲルニカ信者」「ピカソ信者」である異質な世界観です。なので物語のキーとなる「ゲルニカ」「ピカソ」について、ざっくりと書いていこうかな。
 
 

ピカソとゲルニカ

 
 
誰もが知ってるパブロ=ピカソは「20世紀最大の巨匠」「キュビズム創造主」「天才」などと謳われる程影響力の強い画家でした。
そして「生涯最も多くの作品を残した美術家」としてギネスブックにも登録されています。作品は油絵から版画、挿絵、彫刻、陶器と様々ですが、ノートくらいのサイズの絵画であっても当たり前のように数百万はするでしょう。
 
 
そんな天才が描く、無数の作品の中でも、群を抜いて「代表作」と言われているのが「ゲルニカ」ですから、美術史を知らない人でも何となく「ゲルニカはすごい」ということが伝わるかな。
 
 

愛人ドラ・マール視点の1930年代

 
 
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ピカソとゲルニカについて少し書いたので、本書の話をしていきますね。
読み物の魅力の1つとして、私は一人称視点に読者が入り込めるところだと思っています。
「一人称が誰であるか」によって、同じ物語でも全然イメージが変わるし、その人が言いたくない部分も綺麗に消してくれます。
 
 
余談ですが「風立ちぬ」では、一人称は堀越二郎という人物でした。
(突然のネタバレです)
あの戦争で日本が困惑していた時代。今よりも貧富の差が激しく、劇中では人々が論争を繰り返し毎日を不安に生きていました。でも、堀越二郎が一人称であることにより、その辺の「困惑している日本」という背景が殆ど浮き彫りになっていなかったんです。(描写はあるけど、自分とは無関係だと言わんばかりで)今日生きるのがやっとという時代に、堀越二郎はゆうゆうと勉学に励み、お高い大学に通い、海外旅行も決め込んで。お金持ちのお坊ちゃん生活ですよ。でもそんなことを微塵も感じさせない描き方ができるのは、一人称で物語を展開させているからなんでしょうね。ジブリでは時々、そう思ってしまう映画が幾つかありました。
 
 
今回の「暗幕のゲルニカ」も、特に1930年代パートは、一人称だからできる描き方だなあと思いました。
主人公は愛人のドラ・マールです。彼女はピカソ信者であり、ゲルニカ信者です。そしてピカソと同じ芸術家として作品と向き合って描かれていました。時に女性らしい(?)恋愛観に悩む描写があったり。とにかくピカソを「芸術家」としての側面ばかりを追っていたように感じました。
 
 
でもピカソって、女癖の悪いことで有名ですよね?
ドラの他にも同時期にマリー・テレーズ・ワステルという愛人がいるし、妻であるオルガとの間には子供もいるし、この時代の前後にも愛人は何人かいます。ピカソを語る上で、必ず(?)でてくる側面でしょう。
そんな「女癖の悪いピカソ像」を、ドラ視点では微塵も感じさせなかったんです。むしろピカソ周辺の色恋沙汰は、自分の恋愛観として落とし込んでいました。「芸術家のピカソ」と「恋に悩む私」をバッツリ分けて書けるのは、ドラ視点だからでしょう。

 
 
だから凄く面白かったし、読み手の私もすんなりと「ゲルニカ信者」を体感することができました。
 
 

MoMAキュレーター視点の2000年代

 
 
ゲルニカ誕生の時代とコントラストをつけるように描かれていたのが、2010年代です。現在のゲルニカがどう扱われているかというテーマで展開されていました。主人公はMoMAのキュレーターでNY在住の日本人、ヨーコです。いわゆるキャリアウーマンです。そして現代のピカソ信者です。
ヨーコは事あるごとに、ピカソについての詳細なデータや、ゲルニカの分析を、読み手に説明するように語っていたので、美術史が詳しくなくても世界観に入っていける作りでした。
 
 
このパートは、どちらかと言えばハリウッド映画のような物語でした。映像にすると見栄えがしそうな。映画化するんじゃないかと囁かれてるのは、このパートがあるからだと思います。後半の展開がお腹いっぱいだったのも、多分映像にすればしっくりくるんじゃないかな。楽しみですね。
 
 

ゲルニカを取り巻く異様な世界観

 
 
残念ながら無宗教の私は、ゲルニカ教の信者にはなれませんでした。確かに天才ピカソの超大作なので、私もおざなりにしたい訳ではないのですが。
でも「ゲルニカは素晴らしい!」「ゲルニカは世界を変えるんだ!」と、ゲルニカに対する異様なまでの執着心には圧倒されましたね。なんか信者でない私のほうが恥ずかしいんじゃないか、というくらい。このくらいパンチのある物語の方が物語らしくていいかもしれませんね。
天才画家の超大作に真っ向からぶつかった物語、とても面白かったです。
 

 
 
 

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