「去年の冬、きみと別れ」感想

寒暖差が激しい日が続きますが、今日は12月にあるまじき暖かい朝ですね。
おはようございます。

 

先日、「生ける屍の死」が相当読むのが遅かったという話をしたのですが、
今回、中村文則の「去年の冬、きみと別れ」は数日で読み終わってしまいました。
というのも、これは本編190ページしかない短編小説だったからなので、むしろ遅いくらいですね。
前回のものはiBooksでiPadだと1500ページくらいあったので、
そう考えるとあまり変わらないかな。

 

中村文則は「教団X」が恐らく有名だと思うのですが、
レビューを見る限り何と無く、
手に取るに躊躇してしまって。
読んでも面白いと思えるかなあ。まあこれは私の個人的感想です。
でも純文学の小説家である中村文則ですが、この作品はミステリーの要素も含み、
この短編の中に幾つか仕掛けを作っているということで、
読んでみることにしました。

 

さて、本題に入りましょう
ここからはネタバレ含みます。

 

 

読み終わってから「去年の冬、きみと別れ」の「きみ」が誰なのかがようやくわかりました。
登場人物が見事に全員狂っている(小説家は正常?)中で、こんなにも素直な情に溢れた「きみ」に対する言い方。
初めは違和感でいっぱいでした。
その辺が最後の最後でスッキリして、ああこの感じを求めてたんだって。

 

話の大筋は、殺人犯として死刑執行を待つ牢獄の彼と、彼の小説を書こうとする小説家。
小説家が事件の真相に迫ろうと、犯人の関係者を警察の如くあたって回ります。
そのキャラクターそれぞれが強い。

 

天才写真家として、美しい写真を撮る為に、女性を拘束、衰弱させ、遂には燃え滾る彼女を写真に収める牢獄の彼。
性に溺れ、相手の男性達が次々と自殺(自殺未遂)に陥れてしまう彼の姉。
愛した女性そっくりの人形を作らせ、人形と共に生活していたストーカー男。
そんな人間ばかりを相手にして仕事をする人形師。
そして犯人。
皆んな変態。私の大好物。
 
 
ここで注目なのは、天才写真家と言われている木原坂雄の異質性でしょう。
でもなんだろう。
私も芸術関係で仕事をしているから思うのですが、「アート」だとか「フォトグラファー」というカテゴリが得体の知れない能力のように書かれるのが少し違和感を感じるんです。
 
 
確かに作品の中では異質な部分ばかり特筆していますが、何もアートそのものが異質な存在ではないんじゃないかな。もっと芸術の根本は、学問のようにわかりやすい入り口だったはず。
アートが何者で、芸術がどうゆうものかと理解が深まれば、きっと木原坂雄の行動が、多少なりとも理解できるかもしれない。
 
 
少し話は外れますが、芸術や美術について私が書いたものを載せておきます。

【実験】もしも図工にテストがあったら
 
 

 

また皆んな狂いきった生き方ですが、その割にそれぞれが狂った経緯も垣間見れるので、読者が置いてけぼりにならず、結構読み易いです。

 

純文学の先生がミステリー要素を入れてくる作品は、私としてはとても好きです。
変態が勢ぞろいのキャストにストーリー性がつくので私好みでした。

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