「生ける屍の死」の感想

こんにちは、もう12月ですね。
1年が過ぎるのが早い、もうそろそろ自分が何歳なのかわからなくなってきます。
もう20過ぎたら大体感覚が一緒だったし、大学を卒業したらいよいよどうでも良くなってきました。

 

それでも若い頃からちっとも変わらない能力と言えば、本を読むペースです。私凄く遅いんですよ。
山口雅也の「生ける屍の死」という本を購入したのですが、これを買ってからもう3週間経ちました。私が本を1冊読む間に、本の虫と呼ばれる人は、もう10冊くらい読み終わっているくらいでしょうか。以前TVで、現役東大生は分厚い洋書を2〜3時間で読み終わるという話をしていて、
そう考えると東大生と私とは月とスッポンですね。

 

そもそ私は、読みたいジャンルがあんまりないんです。
中学時代に「ハリーポッターと賢者の石」を読んだ時は、9と3/4番線あたりで読むのを辞めてしまいました。駄目でした、ああゆうファンタジー系のものって、1秒のシーンに2、3ページかけるじゃないですか、状況描写が多過ぎて。それはもう小説というよりむしろ説明のように感じてしまったんです。

 

確かに世界観の美しさが事細かに描かれていて、自分が想像出来るまで何度も読み返したくなる。
…そうしていると、疲れちゃいました。その後直ぐに映画化されたので、もうそれで満足してしまいました。

 

そんなこんなで、ファンタジーは断念しましたが、所謂純文学というのも少し苦手です。純文学って、かなり大きなくくりで言ってしまいましたが、どちらかと言うと登場人物の心情を重んじるもの。ストーリー性が時に二の次になって、その作家らしさを感情描写の書き方で伝えるもの。恐らく私は他人の細かい心情に、あんまり興味がないのかもしれません。場面に対する登場人物の心情を表すのに、数行を費やし、比喩を盛り込んで描かれている場面をよく見かけますが、文学的にその言葉の使い方や例えの豊かさに関心して興味を持つことはあります。ですが、その登場人物に共感する迄に至らないんですよね。なんでだろう。

 

そんな私が、唯一楽しいと思って読めるのは、ミステリーのジャンルです。
世界観の描写がどんなに多かろうが、心情の描写がどんなに細かろうが、それが伏線かと思うと楽しくて、これがどう変化していくんだろうと、わくわくしてきます。しかも前半は基本的に、あえて描かれていない場面や心情が含まれてきます。勿論犯人の心情は、他の登場人物とは全く違う描かれ方をするわけですし、犯行の核心をつく場面は伏せてあります。
そこを想像する材料になるのが世界観の描写や、他の登場人物のセリフ、心情です。それが単純な説明でなく機能してくる所が、(結果的に単なる説明だったとしても)とても魅力的に感じます。

 

 

前置きが長くなりましたが、そんなこんなで「生ける屍の死」もミステリーです。少し感想を書きたいと思います。以下、ラストシーンは伏せますが、内容が含まれてきます。

 

 

舞台はアメリカ東部ニューイングランドの片田舎、葬儀屋を営む一族のお話です。「エンバーマー」という職を、私はこの小説で初めてまともに知りました。日本ではまだ聞きなれない分野ですが、所謂「死化粧」の凄いやつです。

 

一部、文面をお借りすると、エンバーマーという職業は、
・顔の修復を要し、体液を取り除き防腐剤を注入する「外科医師」
・死に顔を生きているように再現する「整形外科医師」
・美しくスタイリングする「美容師」
・葬儀という人間の晴れ舞台を演出する「演出家」
・生命保険云々の書類作成をする「法律実務家」
・時に遺族の悲しみを癒す「セラピスト」
と6役をこなす職業、ということになります。こうした職能技能集団ということになるので、他国とは比べものにならない社会的地位が与えられているそうです。

 

そんな誇り高き一族が、死んだ人間が蘇る「生ける屍」を目の当たりにしていきます。
そしてこの本が面白いところが、探偵役のグリンも「生ける屍」と化してしまうところです。
死んでも尚、犯人を突き止めようと奮闘していきます。

 

死人視点の小説と言えば、乙一のデビュー作「夏と花火と私の死体」も、
冒頭で主人公が死んでしまって話が進んでいましたね。(でもあれは結局、傍観者(カラス)の視点という所で落ち着いたんだっけかなあ。)

 

そうではなくて、死んだ探偵役が、体が腐敗しつつある体で尚も思考を膨らませ、行動し、そしていつもと変わらず仕事をしていくんです。こんな探偵視点の小説じゃあ、噂程度でしかなかった「生ける屍」の存在を認めざるおえないですよね。そして他にも自分のように、死んでいるのに生きた人間のように振舞っている人間が紛れているのではないかと疑っていきます。もう一字一句逃してなるものかと読んでしまいました。(実際そんなに読めなかったけど)

 

この探偵役のグリンがまた個性的なのも面白かったです。
探偵というと、私は明智小五郎やポアロのような紳士的な探偵か、コロンボのような常識はずれの刑事を思い浮かべたりしました。ですがこのグリンは、単なる「パンク少年」なんです。勿論職業は探偵ではなくて「葬儀屋」ですし、探偵宣言もしていなかったので、暫くこいつが探偵役だって気付きませんでした。最近 THE 探偵 という方が珍しいので、そんなものですかね。私が彼を探偵役だと気付いた時には、グリンはとっくに死んでいて、そして死んだ体でシレッと仕事をしていました。

 

 

感想というより概要になってしまいました。
最後は本当に興奮しましたが、流石に伏せておきます。
面白かったです!

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